March 20, 2016

『レスター首位』という衝撃

世界最高峰のサッカーリーグ、プレミアリーグで今、異変が起きている。
『レスターが首位』
この事実がどれほどの衝撃かを説明する。



大丈夫大丈夫、そのうち落ち…ない!?

現在、全38試合中、31試合を終えて現在勝ち点差5の堂々首位。
シーズン当初から調子がよかったものの、9月末には失速する、10月終わるまでには元に戻る、クリスマスまでには落ちる、年明けてからはダメになるだろう、と言われ続けたものの、あれよあれよと残り試合わずか7試合のところまで来た。

プレミアリーグ、現在(3/21)の順位



優勝する確率はネス湖の伝説レベル!?

シーズン開幕前、レスターは降格候補に数えられていた。「良くて10位に入れるかどうか」そんな予想ばかり。なぜならレスターは2003年から2013年まで下部リーグで、2014年にやっとチャンピオンシップから昇格して来たばかりで、プレミアリーグ最初のシーズンを14位でシーズンを終えていたからだ。(17位から20位が降格)

大手ブックメーカー(賭博会社)ウィリアムヒルがシーズン開幕前に発表したレスター優勝のオッズは5000倍。13人が買っているそうだ。100円賭けたとしても50万円。
ちなみにウィリアムヒルで他に5000倍のオッズがついている賭けは「エルビス・プレスリーは実はまだ生きている」「ネス湖にネッシーは実在した」という二つ。レスター首位がどれだけありえない事なのかが分かる。



ハリウッドも注目するサクセスストーリー

注目を集めるレスターの中でも一際注目を集めているのがチームのエースであるジェイミー・ヴァーディーだ。しかもファンやスポーツメーカーのみならず、ハリウッドさえもヴァーディーに注目しているのである。
ジェイミー・ヴァーディー
ヴァーディーは現在29歳のイングランド人。今年に入るまでは代表歴もなく、彼のキャリアは苦難の連続であった。
彼は幼い頃から地元チーム、シェフィールド・ウェンズデイでプレーしていたが15歳のときに「背が低い」との理由で放出される。(ちなみに15歳の時に140cmだったそうだが、1年で160cmまで伸び今や178cm。)
その後ストックスブリッジ(8部)に入団。給料が低いため、工場でバイトしながらプレーしていた。「工場での経験が俺の足腰を強くしたんだ。毎日毎日何回も何回もとてつもなく重いものを運んでいたからね。」とヴァーディーは懐述している。

そこから7部のハリファックス・タウンに移籍。シーズン27得点を決めてチームMVPになり、チームを6部昇格に導くと、自らは5部のフリートウッドへ移籍した。フリートウッドでもヴァーディーは36試合31得点の大活躍。その活躍を受け、当時2部だったレスターに引き抜かれると、1年で1部昇格を決め、8部から始まったヴァーディーのキャリアは遂にプレミアリーグに舞台を移した。めでたしめでたし。映画ならここで終わるところだが、ヴァーディーのシンデレラストーリーは完結していなかった。

プレミアリーグ初年、シーズン開幕直前にカジノでアジア人の客に差別用語である「ジャップ」を連呼し、チームから罰金を食らうという何とも不名誉な目立ち方をしたが、そこから大活躍。得点を決めに決めまくり、遂にはファンニステルローイの持つプレミアリーグの連続得点記録を更新、11試合連続ゴール記録を達成した。
ファンニステルローイはマンチェスター・ユナイテッド所属で周りもギグスやベッカムやスコールズらトップクラスのプレーヤーばかりだったが、ヴァーディーの場合はレスターでこの記録を達成したのだからすごい事だ。
今年にはイングランド代表にも選ばれ、2016年のユーロのメンバーに入るのも確実視されている。
この一度は失格の烙印を押されたものの、8部リーグから再スタートし工場で働きつつ、努力の末に遂には1部まで上り詰め、歴史的な記録を樹立し、イングランド代表に辿り着いたストーリーにはハリウッドも興味津々だという。



そこに日本人がいるという凄さ

レスター躍進に欠かせないのが岡崎慎司だ。岡崎はフォワードでありながら得点はあまり取っておらず、主にヴァーディーのサポート役として、囮になったり守備に走り回ったりと、地味な活躍をしているが、サポーターや選手を含め周りは岡崎の重要性を理解している。監督のラニエリは「シンジには満足している。彼はチームの一員だし、いつもハードワークしてくれる。シーズンを通して素晴らしい仕事をしているよ。」と絶賛。ヴァーディーの派手な活躍に隠れがちだが、岡崎もまた、レスター旋風には欠かせないピースなのである。




中盤を支えるのは…飲み水!?

レスターの中盤を支えているのはフランス代表のカンテ、そしてイングランド代表のドリンクウォーターである。そう、読み間違いではない。Drinkwaterなのである。
ちなみに苗字なのでお父さんもお母さんもおじいさんもおばあさんもみんなドリンクウォーターである。ちなみに名前はダニーという普通で面白くない感じ。(笑)
この名前はイギリス人にとっても珍しいようで、ドリンクウォーターが水を飲む事があれば、必ずカメラが写す。
"Drinkwater drinks water"

さらにはサポーターも自作のユニフォームを作ったり、飲料会社が専用の商品を作ったり、と愛されているようである。
Drinkwater and "Drinkbeer"
しかし実力は確かで、イングランド代表にも選出されている。
レスターに注目する際にはこの背番号4に注目してみるのも面白いかもしれない。



まとめ

レスターが今プレミアリーグで首位なのはネッシーがいるくらいありえない事で開幕前はファンでさえ13人しか優勝に賭けていなかった。ちなみにもし優勝すると1934年から続くウィリアムヒル史上最高額の払い戻しになるらしい。
ヴァーディーのサクセスストーリーは恐らく来年か再来年辺りにハリウッドで映画化される。壮大にネタバレしてすいません。(笑) でもその辺りは脚本家がちょい変えるかもですね。
レスターの試合を見るときは岡崎の玄人好みのプレーとドリンクウォーターがウォーターをドリンクするところがテレビに映るか注目してみよう。