「一週間お仕事をお休みする許可がおりたので来週は学校に行かせてもらいます:) 橘」
あんなに多忙な人が休み時間を学校に使うってどういう事なんだよ、と思いながらも久しぶりな橘凛の登校はやはり楽しみだ。
「珍しいね。何々、スキャンダルが出たりするから?(笑)」さり気なく橘の恋愛事情を探ってみる。
「親が仕事続きで心配になったらしくたまにはお休みをってマネージャーにお願いしたみたいです。私も最近忙しくって疲れてたんでたまにはハメをはずそっかなーって:)」
ハメを外す=学校に通う。やっぱり理解できないなーこいつと思いながらもそんな橘とのやりとりの懐かしさに寂しさを覚えた。
「もし時間があったら近藤たちも誘って5人で街にでも出るか?」送信した後に東京の橘に対して広島の本通りを街呼ばわりした自分に誰からも突っ込みが入らない事で恥ずかしさは増した。一人放置プレイだ。
そんな時に携帯がなった。メール受信音ではなく電話受信音。石川からだ。
「もしもしー、どうしたの急に?」
「あのさー、ちょっと暇だったから。何してるの今?」石川が暇だからって電話してきたことなんて一回もなかった。まだ近藤たちは何かを企んでるのかと自然に俺は思った。
「ちょうど橘とメールしてたんだ。あいつ来週学校来れるって!それにせっかくだから近藤たちも誘ってみんなで出かけようと思うんだけどどう?石川は週末部活は?」
「。。。。。」
数秒間間が空いて電話が切れた。
「ごめん、なんか電波悪いみたいだからまた今度!:)」石川から入ったメールはやけにそっけなかった。
―――5分前、近藤宅―――
そこには近藤と石川がいた。
「じゃあ何、せっかく俺が上げたチャンス全く活かさなかったって事?」
「チャンスって、あんなにいきなり二人っきりにされてもどうしていいかわかんないわよ。」
「これだから中学生は、、、しかもペンギンのマスコットってお前らは小学生かよ。俺はもっと刺激的な報告を期待してたのになー!」
「きっとあんたみたいな人には私みたいに純粋に誰かを好きになるってできないんでしょうね。」そう言われて近藤の顔つきが変わった。
「これがラストチャンスだからな。今すぐ告白しろ。」そういって近藤は石川の携帯で勝手に電話をかけた。
自分の背中を押してくれる誰かがいないと気持ちが伝えられないと思っていた石川にとってこれはまんざらでもないチャンスだった。
電話をし始めてすぐ照れた表情で「暇だったから。」っと言った石川の表情は少しの沈黙と共に濁っていった。
突然何も言わずに電話を切った石川を心配し近藤が話しかけると石川は泣きながら話し始めた。
「どうすればいいの?二人きりでいる時さえもゆうきは私なんか見てないんだよ。告白ぐらいして新しい気持ちで次に進みたいって、いっつもゆうきを見るまでは私も思ってる。でもきっとゆうきは目の前で泣き崩れる私を見て初めて私って存在に気づく。それまでの私は凛ちゃんじゃない人。きっとゆうきは自分がそう思ってることに気づかないぐらい凛ちゃんしかしてないもん。私だって。。。バカだよね。なんで雑誌の表紙を飾るような人と自分が競えるなんて思ってたんだろう。本当におかしいよね。」
泣き崩れていく石川を近藤がそっと抱きしめた。
「俺はお前を見てたから。」
「ずっとゆうきを見てたお前の横顔だったけど、見てたから。」
こうして石川は初めて異性と一夜を共にした。
続く。
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