December 28, 2013

【タイトル未定】 三角公園

待ち合わせ場所の三角公園。

この公園は俺達の学校から程よく近く、程よく遠く、密会するには最適の場所と近藤にいつしかか教えてもらった所だ。

「この歳で密会ってお前のプライベートどんなんだよ」と心の中ツッコンだ自分がここで待ち合わせをすることになるとは

何故か20分も予定より早く着き、ベンチに腰を落とした俺は人生初デートにしてはやけに落ち着いている。ちゃんと考えぬいたプランがあるからだ。

中学二年生男子の考えるデートといえばいたってシンプルだ。

必ずプランをするうえで忘れてはいけないことは我々はお金が無いということだ。

我々に許される上での一番の贅沢といえばガストでの夕食。エンターテイメント思考でいけばカラオケ、もしくは映画を観ること。

この選択肢の中で今回のシチュエーションを考慮するとやはり映画が有力だ。何故かと言うと映画とは盛り上がらない日の究極の逃げ道だからだ

デート中に盛り上がらなければ映画にシフトチェンジをする。その事によってまず、2時間の休息と娯楽が待ち構えている。そしてその日の映画の完成度の高さでその日が楽しかった一日になる。そして映画の凄いところはつまらない映画というのも観終わった後に文句を含む修正点を話していると意外になぜか盛り上がる。

「映画でも観に行こうか」という気軽なリードの姿勢。


映画後のディナー時を想定した話題作りの確保。

攻守共にバランスのとれたデートを成功させるためのチケットみたいなようなものだ。学生割引を使うと1000円程度だし、展開の予想できない橘 凛との初デートにはもってこいだ。

何よりも決め手になったのはデス・ノートの実写版が今日から銀幕に現れるという事だ。そして彼女の芸能プロフィールには好きなモノは漫画と書いてある。そんな彼女がデスノートを見落としている事は絶対にないという俺の推測だ。デート相手の情報がネット上で見つかるなんて不思議だなーと思いながらも現代のテクノロジーにまたも助けられた。

普通の人がどう過ごすのかが知りたいという注文付きなら今回のデートの出だしは映画で決まりだ。

そんな事を考えていると待ち合わせ10分前には橘 凛が現れた。

「ごめんなさい。お待たせしたら悪いから早めに家を出たつもりだったんですけど、待たせちゃいましたね。」橘 凛は真っ白のワンピースの上に淡い青のジージャンを着ていた。春にしては少し丈の短いワンピースも白と橘 凛の淡さでお上品に仕上がっている。ここはさせがに芸能人。他のクラスの女子たちとは一線をおいている。

俺は中2ぐらいの女子が小学生みたいな私服から大人っぽくなろうとただただスカートなどの丈を短くするという行為がすごく嫌いだ。お母さんに買ってもらったと言わんばかりのTシャツにそのショートパンツは無いだろうとと蛹から抜けだそうと必死感のあった中1の石川を見るたびに俺は思った。もちろん本人にはそんな事は言えないが。

「大丈夫だよ。僕もさっき着いたばっかだから。」そう言いベンチから腰を上げた。こうして同じ目線になってみると普段の制服姿とは一味違う彼女はやはりかわいい。

「っていうか、そんなに普通で大丈夫なの?芸能人ってみんなカツラにサングラスだと思ってた。」そう聞くと橘 凛は少し笑った。

「そうしたら私は毎朝校門で止められて、生徒指導室行きですね。」

言われてみればそうか。それに普通の人はどういう風に過ごすか知りたいって言ってたやつがカツラにサングラスってちょっと違うもんな。

「またですね。」彼女が言った。

「いっつも不思議な表情で何か考えてますよね?」

確かに俺は頭で10考えたうちの2ぐらいしか口に出さない人間だ。でもメアドといい学校初日での事件といいお前に毎回ツッコミ入れてたらさすがに疲れるだろ。あ、また頭で考えてる・・・。

「また!変な人ですね。本当に!」そういい彼女は少しスネた。

「ごめんごめん。普段は近藤がずっと喋ってるから俺あんまり考えてること口に出さないのが癖になっちゃって。」

「思ってることをちゃんと言わないとロボットになってしまいますよ。」そう言った彼女の顔を見なくてもその言葉は彼女自身に対して言っているんだと悟るのは簡単だった。

「よーし、今日は楽しむぞーっ!!」考える前に自然とそう口に出た。

こうして僕達のデートが始まった。

つづく

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